この記事は、瀬戸芸2022・秋会期に、岡山発のオフィシャルツアーで、高見島・本島を巡ったレポです。
児島港発着・日帰りプランの利用でした。
特に、高見島での写真がかなり多めの、長文記事になっています。
こんにちは。
瀬戸芸にハマりっぱなしのneoです。
3年に1度の、現代アートの祭典・瀬戸芸は、瀬戸内海の島々を舞台に、3会期に分けて開催されます。
- 春会期:4月14日〜5月18日
- 夏会期:8月5日〜9月4日
- 秋会期:9月29日〜11月6日
■画像出典:瀬戸内国際芸術祭2022・公式サイト
3シーズンパスポートを持っている私は、春会期に、全力で島巡りをしたものの、夏会期を全てパス。
そして待ちわびた秋会期、再び島通いを再開しました。
今回訪れたのは、秋会期のみの会場・高見島と本島。
ちなみに、2つの島の場所は、ここです。
航路図や、船の時刻表を片手に、オリジナルのスケジュールを立てるのも、瀬戸芸の楽しみの1つ。
一方、離島を効率よく回りたい場合、公共交通機関の利用では、なかなか難しいのが実情だったりします。
なので、あまり休日が確保できない人には、
オフィシャルツアーが、オススメ!
記事の最後に、オフィシャルツアーのメリットもまとめてみたよ。
離島に惹かれるけど、聞いたこともない島って、ハードル高っ!
自分で下調べしたり、細かいスケジュールを考えるの、無理〜。
「予定してた船やバスに乗れないこともある」って聞いて、なんか心配。
そんな人はもちろん、個人旅で島を訪れる人のご参考にもなりますので、是非チェックしてみてくださいね。
穏やかな海・島の絶景と、色んな現代アート作品を見たい人!
「一緒に現地に行った気分」になってもらえたら、嬉しいな。
それでは、相変わらずのマイペースなレポ、スタートです!
JR岡山駅〜児島観光港
JR岡山駅までは、新幹線でやって来ました。
在来線の、四国・高松行き「快速マリンライナー」に乗り換えます。
瀬戸大橋を渡る手前に、目的地のJR児島駅があるよ。
9時5分、JR岡山駅を出発。
20分くらいで、JR児島駅に到着。
児島は「児島ジーンズ」で人気の町です。
駅近の港に向かいましょう。
駅から港までは「駅からすぐ」「徒歩1分」「徒歩7分」など、色んな情報が。
私の足で、7分くらいかな。
到着しました。
良いお天気で、本日の最高気温・29°Cの予報。
待合室のソファーに、ご注目!
さすが児島、デニム生地だ〜。
瀬戸芸案内所を含め、ブルー系で統一されてて爽やか。
ツアー受付で、検温済みの目印になるリストバンド・島のパンフなどを受け取りました。
最初に訪れるのは、高見島。
今年は、新作アートも増えてて楽しみ。
ふと天井に目をやると、何やら視線が?
‥タコ、超こっち見てるんですけど〜ッ!
スルドい眼光に見送られつつ、時間通りチャーター船で出発です。
児島観光港〜高見島
桟橋で待機してたのは、こちらの船。
定員50名に対し、ツアー客11名+ガイドさん2名、そして船長さんの計14名という、ゆったりさ。
内装、昭和テイストww
こういう所とか、和室っぽい。
児島を出航してしばらくすると、採石場らしき無人島が見えました。
瀬戸内海の島々には、昔から多くの採石場があり、大坂城などにも使われています。
今から訪れる高見島・本島にも、石にまつわる島の歴史にちなんだアートが待ってるそう。
児島観光港から、高見島・本島を目指す航路では、瀬戸大橋の下をくぐるのも、ワクワクポイントです。
皆さ〜ん!船長さんの計らいで、瀬戸大橋に近づいたら、船を停めてくださるそうですよ!
おお!
こういうサービスが、チャーター船ならでは。
写真を撮るのに、定船中は、窓を開けても良いそうです!
‥ファッ?‥何ですと⁉︎
確かに、飛び散った潮の跡クッキリの窓越しじゃあ、いい写真が撮れないけど‥いいの?
後ろの席の人と、顔を見合わせながら、ゆっくりガラス戸をカラカラカラ‥
うっひょ〜!
ソファの横、すぐ海っ!(^▽^;)
何か落としたら、大変!
窓側に置いていた帽子を、慌ててお膝の上に。
そして、見上げれば、瀬戸大橋。
ただただ、圧倒される。
瀬戸大橋のおなか。
橋の上に車道、その下に、JR瀬戸大橋線が通っています。
ところどころ、島を橋脚にしながら、本州と四国を結ぶ巨大な橋。
平成元年の開通でした。
開通した時、長年の夢が実現したニュース、かなり盛り上がったんだよ!特に、岡山さんと香川さん。
バイバイ、瀬戸大橋。
また帰りにくぐるね!
(‥おや?ガイドさんが前の方から、何か配り始めたよ?‥お菓子?お菓子?)
‥瀬戸芸オリジナル・ウエットティッシュでした。
お菓子じゃなかったけど、これも嬉しい。
オフィシャルツアーのいいところの1つが、ぼんやり景色を眺めながら聞く、ガイドさんのお話。
なにしろ各自で調べるより楽な上、ガイドブックやネットに載ってない、レア情報が聞けたりも。
ちなみに、今から向かう高見島は、こんな島です。
- 瀬戸芸会場になっている12の島の中でも、過疎・高齢化が進んでおり、島民は20名くらい
- 約80年前まで、除虫菊の栽培がさかんだった
- 海面から突き出た山のような形の島なので、ほぼ平地がなく、斜面に張り付くように集落がある
除虫菊は、蚊取り線香の原料です。最盛期には、白い菊で島が埋め尽くされ「まるで、雪が積もったようだった」‥そんな高見島の原風景が、モチーフになった作品もありますよ。
私は初めて訪れる高見島。
さてさて、どんな驚き・感動が待っているでしょうか?
高見島
高見港周辺(2作品)
11時、高見島に上陸。
この島は、香川県です。
静かな港。
太陽は真上で、影もこの通り、ほぼ真下。
さっそく港に、アート作品、ドーン。
作品名「Merry Gates」。
原色の赤、眩し過ぎ。
絶妙なバランスで立ってて、わずかに風で揺れるんですよ。
地面には、廃屋になった家の瓦が。
空き家が倒壊・風化していく際、最後まで残るのが瓦で、それを集めて使っています。
瀬戸芸パスポートに、1つ目の高見島スタンプをポン!
鑑賞した作品の番号の上に、押印していきます。
この島の廃屋を利用した現代アートは、京都精華大学によるプロジェクトです。2013年から瀬戸芸に参加していて、インパクトのある作品が多いですよ。
なるほど。
ほとんどの作品は、再生した空き家の中に、制作されている、と。
最初の作品は、このお家かな?
えっと、お邪魔しま〜す。
よく見ると、凝った造りだな。
かつて、立派なお屋敷だったことが、よくわかります。
作品名「時のふる家」。
暗い玄関から、家の中に入ると‥
わっ。
建物全体が、1つの大きな箱。
壁に刺さるアクリル板を通した光。
室内の雰囲気は、お天気や時間帯で、刻々と変わるそう。
今日はいい天気だから、かなり明るいですね。
透かし彫りが、そのまま光を通す窓として生かされてます。
キレイだけど‥痛々しくもある。
改めて外から見ると、こんな感じ。
‥めっちゃ刺さってました。
この作品は、光に包まれた高見島の美しい風景と、その一方で深刻な過疎・高齢化に悩む、厳しい現実を表現しています。
島歩きでは、たまに猫と会えるのも嬉しい。
どの子ものんびりしてて、近寄っても逃げません。
猫ちゃん、猫ちゃん!
平地にあるアート作品は、この2つで終わり。
ガイドさんの後をゾロゾロ歩くツアー参加者は、全員が瀬戸芸リピーターでした。
わあ、ザクロが実ってる。
きゃ〜、1個欲しい!美容にもいいんですよね〜。
お花も、可愛いな。
島の簡易郵便局から出てきた、小さなおばあちゃん。
「あらあ、あんたら、どこから来たん?」‥マイ自転車の荷物を指差しながら、ガイドさんに「ちょっと、これ食べんね?」なんて。
さあ!
ここから、島の急傾斜に建てられた、家(アート作品)巡りに突入。
高見島の特徴的な「手積みの石垣」が続く、坂道が始まります。
手積みの石垣
細い道の左側が、手作業で積まれた石垣。
江戸前期の大火事の後、当時の領主が中心になって、計画的に島の集落を築きました。それが今も、そのままの姿で残ってるんです。
家の跡地らしき区画に転がるのは‥風呂釜?
かつて、ここにどんなお家があって、どんなご家族が暮らしていたんだろう。
おお!結構、登ってきました。
海面が、かなり下に見える。
‥しかし、暑い。
夏が戻ってきたみたいに、暑い。
廃屋の間から覗く海。
恐らくこの集落に、多くの島民が行き交っていた頃と、変わってない風景なのでしょう。
昼食「海のテラス」
オフィシャルツアーには、ランチが含まれています。
会場は、作品展示もある「海のテラス」。
手積みの石垣の道から、この石段を降りてきました。
ずっと息切れしてます。
アップダウン、激し過ぎ〜。
玄関前に、郵便ポストが残る空き家。
このポストに、お手紙が投函されてたのは、いつ頃までなのかな?
狭い路地を、更に進むと‥
いきなり視界が開けた!
ここが「海のテラス」。
テーブルに並んで、目に飛び込んでくる野外アート。
作品名「FLOW」。
よく見ると、正方形の2つの窓の周囲に「F」「L」「O」「W」のアルファベットが、配置されているんです。
ホントだ!
教えて貰わなきゃ、危く気付かないとこだった。
メニューは、オリーブ豚の白ワイン煮込み。
快晴なので、瀬戸大橋が見えています。
隣席の女性が頼んだビールの瓶も、開放的な雰囲気にピッタリでした。
私は、お水とポカリをゴクゴク。
木漏れ日、眩しいな。
ところで瀬戸芸は「こえび隊」という人達に、支えられています。
【こえび隊って?】
瀬戸芸のボランティアサポーターで、日本中・世界中から集まった人達が、会場の島に渡って活動中。
アート作品を作ったり、守ったり、島のガイド・アート作品の案内・イベントのお手伝いの他、島の祭や催事を手伝ったりも。
誰でも参加でき、年齢制限ナシ。1日からの参加も可能で、隊員募集中。
そんなこえび隊の人と、お話する機会がありました。
ここもね、荒れ果ててたのを、かなり整備したんですよ。斜面の木を刈って、伸び放題の草を抜いて、竹藪もあったし、石を動かして、本っ当に大変でした。力仕事は、男性陣が頑張ってくれて‥。
‥そっかあ。
初めて来た私なんて、まるで以前から、このスペースがあったように思いがちだけど‥
過疎・高齢化で、島民20名の離島に‥展望台やイタリアンレストランなんて‥ない。
山だけに、イノシシも出る。
人の手が入らなければ、物凄い勢いで、野生植物が空き地や建物を覆うはず。
それを思うと、このレストランを設計・運営するまでの労力や、日光直撃・潮風吹きざらしのテラスで、アート作品を美しく管理するボランティアさんに、頭が下がりました。
頑丈な建物内に、整然とアートが展示されて、カフェやミュージアムショップの併設もデフォな、町なかの美術館とのギャップ‥!
午後から巡った家々(13作品)
さて、お昼からが本番、張り切って行きましょう。
まずは、このお家から。
わ!大きなソテツ、めっちゃ生き生き!
ここも、立派なお宅だよなあ。
あれは‥焼却炉かな?
アート作品、外からでは、全く分かりませんが‥
中、こんなんなってた!
作品名「過日の同居 2022」。
岩絵具で、布に描かれた大胆な絵と、人が住むお屋敷だった頃の面影が、1つの空間に。
‥鳳凰、わかります?
ここで暮らしていた、家主さんの気配を感じる、明るい陽だまり。
この作品のアーティストさんは、島の北部にある無人集落を取材され、
「空き家に残された家財道具や日用品、放置された庭の植物、あらゆる場所にあった事物を画面上で継ぎ接ぎしています」
と仰っています。
玄関に戻り、2階も見に行きましょう。
しかし急な階段で、ステップの幅が狭いなあ。
‥ほぼ、ハシゴ。しかも、手前に斜めってるから、滑り落ちそう。
おお、頑丈な梁(屋根を支える横木)も、見どころですね。
あ〜ん、階段、怖いよう〜。
降りる前から、および腰。
繰り返しますが、この島、坂道・石段の連続です。
午前中だけで、既に膝がガクガクしてるので、竹の手すりを握りしめる手に、力が入ります。
狭〜い2階。
次々人が上がってきては、見終わった人から降りるルートは唯一、この階段。
登る時は、前の人を焦らさないように、降りる時は、後ろの人を待たせないように。
ツアーで来てる私達とは別に、個人の来島者も多い瀬戸芸。譲り合い・声の掛け合い、大事。
この後、更に坂の傾斜が強くなり、ガイドさんもツアーの皆さんも、だんだん無言に。
途中、自由に使える杖を見かけたけど、アレ、借りとけば良かった。
崩れかけた石段の途中で、お互い
「‥ハァ‥ハァ‥大丈夫ですか?」
「‥ハァ‥ハァ‥はい、でも、お先にどうぞ‥ハァ‥」
みたいなやりとりが続き、追い越したり、追い越されたり。
頑張って笑ってるけど、しんどすぎて「私のことはもういいんで、皆さん、先に進んで‥」って言いそうに‥。
ご年配の女性と「私ら‥いつもエレベーターと、エスカレーターばっかりだからねぇ」なんて、苦笑し合うことで、気も紛れました。
1人だったら、何度か道の脇に座り込んでいたと思いますが「‥皆さんに‥ご迷惑をかけては‥」と、頑張れたのだと思います。
小高い敷地で、待っていた作品は「うつりかわりの家」。
あ!最初に見た「壁にアクリル板、めっちゃ刺さった家」のアーティストさんだ!
写真で見ると明るいけれど、眩しい外から入って、目が慣れるまでは、かなり暗い室内。
膝ガクガクだけに、足元も不安で、摺り足です。
ひゃ〜!
壁に規則的にはめ込まれた、アクリルの筒から、外の光が入ってきてるのか。
‥おう、こんなところに、裸電球。
残された古道具が、ひっそりオブジェに。
ドットの照明を浴びて、淡く浮かび上がってる。
時が止まった柱時計が醸し出す、ノスタルジーたるや。
自分の中の、思いがけない扉が開かれる瞬間。‥心地いい。
これは、一段高い所から見た、このお家の屋根です。
見て!
瓦にアクリル筒!
雨風に負けない、ガッチリ固定。
もろい土壁だって、この通り。
1つ1つ垂直に開けた穴を補強して、アクリル筒を固定してるんだろうな。
こういう細部に気付いた途端、手放しで驚く。
次のお家は、1階と2階で、別々のアーティストさんの作品?
まずは、1階から。
作品名「はなのこえ・こころのいろ」。
和室に整然と咲き誇る「はなのこえ」、聞こえますか?
高見島のシンボル・除虫菊。
かつて、この島の斜面を、真っ白に覆ったという花。
右半分が写真、左半分が力強いペイントで描かれています。
廃屋空間に佇む「こころのいろ」、見えますか?
常に、鑑賞者の感性が試されている気が。
脳容量の半分以上が、身体のしんどさに占められて、アート鑑賞分の空き容量、ショボ過ぎ。
2階に上がります。
1つ目は、男性のお部屋?
写真左側、ベッドならぬ、ゴザ布団。
壁のコートと山高帽、そして草履。
置いてある小物の1つ1つは、間違いなくアーティストさんが、意図的に厳選したもの。
もう1つのお部屋は‥作品名「高見島パフェ」。
‥パフェ⁉︎
な、なんじゃこりゃー⁉︎
‥Romanticが止まらない。
ほんのり漂う甘い香りの正体は、このバラに使われている、お砂糖からなんだって!
素材的に、時間による劣化が起こります。
日々の気温や人の熱気・虫に食べられたりして、バラの形が変わっていく過程も含めたアート、らしいです。
‥あ〜、私が少し前に訪れた時より、微妙に形が崩れていますね。
ジワジワ形が崩れていくバラは、少しずつグラスの中に落ち、更にパフェらしくなるそう。
何十年か先、謎の物質の残骸(?)が入った古いグラスを見ながら「これ、昔はバラだったんだって‥ホントに?」なんて会話する、未来の鑑賞者さんを想像しちゃった。
‥はああ、なんか色々、濃いお家だった。
あの手この手で、揺さぶりをかけてくるのが、現代アート。
外には相変わらず、のどかな絶景が広がっています。
やっぱ、来てよかった。
左手前は、斜面に散見できる廃屋跡の1つ。
倒壊家屋と、今も島民が住むお家と、アーティストさんが再生した空き家が混在する島です。
あ!
登ってくる時に通った、お寺だ。
空海が開いた「大聖寺(だいしょうじ)」です。少し時間があるので、寄ってみましょうか〜。
弘法大師・空海ゆかりのお寺って、全国各地にあるけれど、そういえば空海、香川の人だったな。
‥って、ふえええ、また石段〜っ‥。
島の人に「どうぞ、鐘をついてください、私らが昔から参っとるお寺じゃ」と声をかけられ、何人かの人が鐘を。
‥鐘の音が‥静かな昼下がりの集落に、溶けていく。
丸々太って、気迫あるシャチホコさん。
お寺はもちろん、ここで色んなものを守ってるんだろう。
高見島には「さざえ隊」という、島を支えるボランティアの人達がいます。
さざえ隊は、島の出身者さんも多く、定期的に島に通って、掃除や花壇の整備をされているそう。
確かに、島のあちこちに、キレイなお花が。
手積みの石垣も、雑草に覆われることなく、こまめに管理されているのがわかります。
次の作品に向かっています。
‥実は、急な下り坂も、楽じゃない。
スニーカー履きなのに、つま先が痛いので、足の指先をグーに丸めて、足裏全体で、1歩1歩着地中。
これ、草履だった時代って、鼻緒が食い込んで、大変だったんじゃ‥?
次のお家の玄関を入り、キッチンの隣が、
作品名「通りぬけた家」。
室内に気流を感じ、ドアから建物を通り抜けられるようになってました。
‥あ、この窓から、お外が見えるの?
覗いてみると「おお!」と「うん、知ってた」の両方。
鉄板でできているので、ノックすると、聞き覚えある重い音が響く。
通り抜けてるのは、きっと風だけじゃなくて、この島に流れた、遥かな時間。
お家の神棚を、そのまま残してる作品が多いな。
さっき覗いた細い窓。
外に回るとこんな感じでした。
‥あら、次って、すぐお隣のお家ですか?
作品名「かたちづくられるもの」。
わ〜!ここ、凄く好み!
高見島での人同士の繋がりと、寺社仏閣に無数に貼られた千社札のイメージを重ね合わせて製作されたインスタレーション作品。
■瀬戸内国際芸術祭2022公式ガイドブックより引用
青×焦げ茶色、なんか落ち着くなあ。
ガイドさんに勧められるまま、青い座布団に、腰を下ろしてみます。
あそこ、床の間だったんだね。
天井や引き戸も、この通り。
やたらモダンな内装、我が家でも真似したくなる。(←ムリ)
これまた、立派な神棚です。
ツアーの男性が「この島、金比羅さんが近いからね」と仰っていました。
千社札、私も好きですが、寺社仏閣に貼ったことはありません。
この作品は「サイアノタイプ」という技法で製作されています。ご興味のある方は、調べてみて下さい。
‥さいあのたいぷ。さいあのたいぷ。
鑑賞中「帰宅したら、調べてみよう」と思うことが、どんどん溜まるのも、アート鑑賞時のお約束。
運動嫌いの私にとって、修行レベルでハードな巡礼に、頭も心もいっぱいいっぱい。
身体の感覚と、脳の感性を切り離せ、私!
作品名「待つ点 The Waiting Point」。
「弘法も筆の誤り」で、空海が書き忘れた「應(応)」の字の点と、この島の形が似ているところから、着想を得た作品だそうです。
真ん中のテーブルは、高見島の形(筆で書いた「点」の形)をしています。
ホントだ!
パネルになっていた、アーティストさんのコメントも、なかなか興味深い内容でした。
そして‥ふと目に入った、この昭和ガラス!
この柄のガラス、昔住んでた家にあったの、覚えてる!
今じゃ、ほとんど見かけることないから、懐かしいな〜。
こんな風に、アート以外にも、思いがけない出会いが続出。
「再生された空き家」のすぐ近くに「再生されなかった空き家」が残ってる侘しさ。
「瀬戸芸がやって来なかった高見島」の現在の姿は‥きっと、とても悲しいはず。
そして、そんな過疎・高齢化の島が、日本各地にある。
作品名「高見島の木」。
庭の1本の木の根を、丁寧に、丁寧に、掘り出したアートです。
木の根は、家屋の地下まで伸びていました。
ふと「優しい人が住んでたんだろうな」と思ったのは、
ツバメの巣が落っこちないよう、添えられた木板が残ってたから。
次のお家は「扉を閉めてご鑑賞ください」か。
作品名「まなうらの景色」。
広辞苑より【まなうら 眼裏】
(現代短歌の歌語) かつて見た姿や情景が思い描かれる、目の奥。まぶたの裏。
‥ん?んんん〜?
これは「ステンレス線が生み出す、かつての島の記憶」だそう。
荒々しい海と、静寂な海。
対照的な、2つのイメージを表現した作品で、こっちはキラキラサイト。
棚の中にも、小さな「記憶」?
黒いステンレス線。
こっちが‥静寂サイトかな。
自由に感じていいのが、アートのフトコロの広さ。
お次は‥
およ?ゴム手袋がスタンバってるぞ?
‥ってゆーか、天井、低っ!
少し身をかがめて、お邪魔しま〜す。
‥なになに?
中央の本に触れる人は「手袋をはめて、丁寧に扱ってね」だって。
‥え〜っと‥本?
このお部屋の中に、本があるの?
‥あれかっ!
正方形の白い本。
壁は、ぐるりと‥
こんな感じ。
「古いお家の中に、外からじゃ想像できない世界が広がってる」という現象に、慣れてきたかもwww
お次の作品は「Re:mind」。
「家をめくり、現れるものとは」‥だって。
空き家に漂う、残されたモノの気配を描き可視化する。押入れの襖が開かれ、畳を剥がし捲られたとき、隠されていたモノは何を思うのだろうか。
■瀬戸内国際芸術祭2022公式ガイドより引用
このお屋敷、もしかして‥怖い?
空き家に、残されたモノ?
隠されていたモノ?
‥‼︎
わっ、目が合っちゃったっ!(^▽^;)
2階もあるんだって。
ええ、足元に注意してたら、頭を打ちました。
古い木箱が、いっぱい。
‥‼︎
板の隙間に‥なんか‥おる⁉︎
めっちゃおる‼︎
ああああ空き家に漂う残されたモノの気配を可視化してくださっているんですねありがとうございますう
そそそれでは私はこの辺で失礼しますう
は〜、びっくりした!
お庭の盛り土は、海に浮かぶ高見島。
港に向かって、少しずつ下っています。
柿がなってる。
はい、港に戻ってきました。
暑さにもやられて、疲れた〜!
高見島〜本島
オフィシャルツアーの楽チンさは、疲労時こそ、ありありと実感します。
船に乗り遅れないよう、必死で走るとか、暑い中、何もない港に足止めとか、一切ナシ。
走った挙句、船に乗り遅れるとか、悲し過ぎ。最悪、島に取り残されます。
チャーター船なので、全員、余分な荷物は船内に置き、必要最小限の荷物で、歩き回れました。
途中で読むことのない、分厚いガイドブックや、絶対着ない上着なんかまで持ち歩いてたら、かなりの重量。クタクタ度もアップして、アート鑑賞どころじゃ‥。
あああ、涼しい船内で、隣の人を気にせず、ゆったり座れるありがたさよ。
軽く荷物整理したり、持ってきたおやつを食べたり。
予定通り、14時に高見港を出発しました。およそ1時間弱で、本島・笠島港に到着します。
「海上を効率よく移動する=各島での滞在時間が長くとれる」、これに尽きる。
この辺は、本州と四国が最も隣接した海域で、潮の流れが早く、しかも複雑になっています。
派手な水しぶきを上げ、船体が上下に揺れてますが、
何しろ高見島のアレ(笑)で、船内は疲れ果てて眠る人、続出。
こういう隙間時間に、スッと眠れる人、羨ましくてたまりません。
スッキリ目覚めて、次の島で、また元気に歩き出せるんだろうな。
程なく、ガイドさんが「今、向かってる本島は、こんな島」と、アナウンスしてくれました。
- 信長・秀吉・家康の時代、大名直下で自治を許された、塩飽(しわく)諸島の本拠地
- 複雑な海域に位置する島で、かつては海上交通の中心地
- 操船・造船技術に長けた船乗り達は、後に「塩飽大工」として活躍
- 城下町の佇まいを残す「笠島まち並保存地区」は、日本遺産に認定
- 採石場が多い、石の島。瀬戸芸で、石にまつわるアート作品も
間もなく、本島の笠原港です。
海上を滑るように、ゆっくり走行中。
一列に並んだカモメさん達、可愛い。
本島には、歴史的な見所も多いのですが、
今回は、ガイドさんと一緒に、笠原地区のアート作品を巡ります。
本島
笠原地区(5作品)
下船後、再びガイドさんの後について、ゾロゾロと「笠島まち並保存地区」へ。
さっきの高見島に比べたら「平地で歩きやすい!」って思うのは、私だけでしょうか?
‥いいえ、だれでもwww
塩害に強い、焼き杉を使った家屋が並ぶ、城下町のような雰囲気です。
シックな街並みだなあ。
そこに、ポツリポツリ、見慣れた青い看板。
早速、石を使った作品が集まったお家へ。
2本の台座も、乗っかってる石も、1つの石から掘り出しているのだそう。
和室に、メタリックストーン。
これは、1kgの石がはかりに載っています。
「ちょうど1kg」という点に、アーティストさんは、貴重な価値を見出し、この作品を制作したそう。
‥デジタルの石が、黒い画面の中で、クルクル回ってるぞ?
中庭には、お隣の広島(←島の名前)から持ってきた、色んなサイズの石がゴ〜ロゴロ。
それぞれ、重さが書いてあります。
これらは全て「1kgではなかった石」。
ちなみにこの石達は、瀬戸芸が終われば、元の島に戻されるそう。
木の格子窓は、江戸時代のものだそうで。
次の作品、このお家の中ですか?
作品名「石が視力を失っていないように、盲人も視力を失っていない。」
‥「。」までが作品名です。
赤い糸には「幸福」という意味がある、とのこと。
よく見ると、割られた竹に、小石がぶら下がってる。
風がそよぐと「カラ、カラ」と、風鈴のような音が。
パンフによると、この作品が表現しているのは「変化し続ける自然のあり方」。
2階は‥
おお、糸が白。
白い糸には「邪気を払う」という意味があるそうです。
白い糸を頭に巻く風習があって、下方の輪は、それをイメージしてるんだって。確かに、人の頭くらいの大きさ。
この保存地区には「東小路」「神社通り」などと並んで「マッチョ通り」という名前の通りが。
「町通り」がなまって「マッチョ通り」になったようです。
作品名「無二の視点から」。
石の視点で描かれたという、数々のモノトーン絵画が、2階建てのお家に展示されてました。
壁に絵画が展示されてる様子は、小さな美術館みたい。
黒いサンドペーパーに、石などで描かれたという、巨大屏風にビックリ。
島の石達は、四国・丸亀城の石垣にも使われました。
石の視点から見た構図なんですね。
描画ですり減った石と一緒に、鉛筆書きのタイトルが。
「石垣の石が見ていた白と空」。
アーティストさん曰く「全ての存在に唯一無二の視点と立場があり、一期一会の時間の中で世界と歴史の一旦を担っている」。‥もちろん、路傍の石にもね、ということみたい。
おや、少し、陽が傾いてきましたね。
作品名「レボリューション/ワールドラインズ」。
大きな石を、金属で貫いてる意外性。
そしてそれが「和室の畳の上」という違和感!
惑星の軌道のようにも、見えてきませんか?
隣のお部屋は、計算し尽くされた、かなり不思議な空間。
鏡が効果的に配置されていて、立つ(見る)位置によって、和室内の実像と鏡像が、一瞬で入れ替わります。
例えば、このスリッパ。
青い部分が実像、ピンクの部分が鏡像。
顔を数cm、左右にずらすと、スリッパの色が切り替わる。
茶筒・座布団など、あちこちにバグ発生。
そして、このお家も、凄かった。
パンフより。
「大坂城石垣にも使われた本島の石を用いて、潮の満ち引きを作る『月』を表現した空間で宇宙との関わりを表す。」
石が!糸で天井に吊られてる!
無重力で浮いてるようにも見えました。
‥1つ1つの石ね、結構重いと思うの。
右下方に月があるとはいえ、ここは地球だもの。
この後、自由行動時間になりました。
ガイドさんと一緒に、野外作品を見に行く人・カフェに入ってひと休みする人・私のように、有料施設(築100年、塩飽大工意匠の家・吉田邸)を見学する人など。
吉田邸は、残念ながら撮影禁止。塩飽大工の高度な建築技術って、今では誰にも再現できないんだって。若冲の絵なんかもあったよ。
集合時間には、みんな港に戻り、チャーター船に乗り込みます。
本島〜児島観光港
本島・笠島港を16時半に出発、17時に、児島観光港に到着予定です。
ただいま〜、瀬戸大橋。
今日の高見島・本島ツアーで、溜まったスタンプの数は、
- 高見島:14個
- 本島:3個
計17個でした。
1人のアーティストさんが、複数作品を手掛けている場合、スタンプは1個。
素晴らしい!高見島、ほぼ制覇!
ちなみに前回(2019年)の瀬戸芸では、同じく児島観光港発着で、本島だけの日帰り旅をしました。
レンタサイクルで、島に点在するアート作品・歴史遺産を、の〜んびり見て回ったのです。
今回は、笠原地区限定での新作アート鑑賞だったけど、島の広範囲を散策するのも楽しかったな。
オフィシャルツアー 「ここが良かった」まとめ
高見島・本島のオフィシャルツアー、こんなところがオススメです。
個人の感想も含みます。
- 港で待たされる時間がなく、不便な離島間の移動がラクラク
- 船に乗り遅れたり、人が多過ぎて発生する積み残しがない
- チャーター船はゆったり座れ、余分な荷物も置けるので、必要最小限の荷物で歩き回れる
- フレンドリーなガイドさんが、道案内をしてくれるので、複雑な路地などでも迷わない
- アート鑑賞中、作品の解説・制作の裏話なども教えてもらえる
- 気軽に写真を撮ってもらえる
(シャッター係を頼めるほか、ガイドさんが撮影した写真を、後からQRコードで見れる) - 島のパンフの他、小さなお土産あり
(今回は、ウエットティッシュ・熱中症対策の塩レモンタブレット) - 島で迷子になった時や緊急時用に、ガイドさんの携帯電話番号が渡されている
- ランチ付きツアーなので、レストランでの待ち時間も、昼食難民になる心配もない
- 「トイレ、この先にはないから、今のうちに‥」などと、声をかけてもらえる
- 他のツアー参加者さんと、情報交換や会話をするのも楽しい
あと、島歩き中の路地や会場に、たまたまアーティストさんご本人がいらっしゃったことがありました。
もちろんご本人は「これ、私が作りましたーっ!」とか言わないので、ガイドさんに教えていただいて初めて
わあ、この人が作ったのか〜!お会いできてラッキー!
なんてことも。
ツアーの種類や、催行日が少ないのは難点ですが、瀬戸芸で、どこをどう回ればよいか悩んでる人や、
この島のコレだけは、絶対見たい!
という作品が、オフィシャルツアーに入っている人は、ツアー参加もいいですよ!
詳細は、公式サイト参照で。
ご予約は、お早めに!
■画像出典:瀬戸内国際芸術祭2022・公式サイト
秋会期、私はまだまだ、島に通う気マンマンです。
この後に控えたオフィシャルツアー・個人旅、どちらも楽しみなのでした。
最後まで読んでくださって、お疲れ様でした。それでは、また!